「何ができるんだろう」とか「何もしていないんじゃないか」とか焦りのような感情がいつもどこかにあります。このような状況に陥ったときに、誰でもが抱く感情だと思いますが、僕は「いまの自分にできることは?」の問に、見るということを選びました。自分の住むところから遠くない場所で起きた未曽有の出来事を語り継ぐべき体験として、直にこの目でしっかり見ておこうと思いました。

3月27日に釜石へ行き、そこで津波の凄まじい破壊の様子を目の当たりにしました。4月1日に宮古市から三陸沿岸を縦断する国道45号を南下し、山田町、大槌町、そして釜石市まで見て回りました。ことに山田町と大槌町は港に面した中心市街地が壊滅し、街そのものが無くなっていました。また、点在する小さな漁港を持つ町の多くもその姿を変えていました。そのような過酷な状況のなかで道路を確保し瓦礫を撤去しながら救助活動と支援活動をする自衛隊員の姿を見ました。信号の無くなった道に立って誘導する警察官を見ました。懸命の救助活動を続ける消防団員の姿を見ました。

4月3日は気になっていた三陸沿岸北部の小さな漁港を訪ねてみました。三陸沿岸のリアス式海岸のなかでも断崖絶壁の荒々しい景観が続く北部地域は狭隘な入江に小さな漁港と集落が点在しています。そのなかのひとつ島越漁港へ行きました。あの美しい風景は一変していました。あらゆる言葉を持って来てもこの光景をどのように表現したらよいのかわかりませんでした。

島越漁港1

島越漁港2

島越漁港3

島越漁港4

島越漁港5

島越漁港6

この大災害から立ち直るには人も町も長い時間が必要なのだろうと感じました。いまも「自分には何もできなのではないか」という思いはありますが、ずっと見ていこうと思っています。これからの長い時間の中で自分ができることが必ずあると思って。